鉱山の町の”肉団子のスープ”
“おじさん、肉団子ふたつね”
大人たちで賑わう夜の繁華街に不似合いな子供の声。軽い挨拶を慣れた会話が繰り広げられます。
パズーが残業前に夜食としてスープを買いに店を訪れる冒頭のシーンです。

子供の頃の私にとって、このシーンはなぜかとても印象的で、”肉団子”という響きと、”ふたつ”という言い回しが不思議と魅力的でかつとても美味しそうな響きに聞こえました。
実際のところ、この料理についての具体的な描写は、上画像のお店のおじさんがパズーの容器にスープを注ぐ一場面のみです。ですが、大ぶりのおたまにたっぷりと掬われ滴るスープに、客で賑わう店内、さらにパズーの言う”肉団子”という響きがこの”ジブリ飯”の魅力を引き上げます。そして何よりおじさんの柔和な表情、絶対に美味しいスープを作る人だ、という安心感のある顔です。
“ふたつ”というのも、良い加減で…。”ひとつ”だけでは寂しいけれど、”みっつ”はちょっと贅沢、”ふたつ”ならいいよね…というような機微があったのかな、なんて思ってしまいます。
人々の会話や街の雰囲気からするとパズーが働くこの鉱山にはどうやらあまり先がないのであろうことは明らかなのですが、そんな中で夜にもかかわらずこの界隈が多くの人々で賑わうは様子は人々のたくましさが溢れたジブリ映画らしさを感じる場面でした。
パズーの買った鉱山街の”肉団子のスープ”はどんな料理?
さて、ラピュタの舞台のモデルとなった場所はイギリスのウェールズであるといわれています。
イギリスで”団子”といえば、ダンプリングがまずは思い浮かびます。こちらのダンプリングは小麦粉とスエットで作られたゴロゴロっとした大きな団子で、ビーフシチューなどの煮込み料理に入れて食べられる伝統的に親しまれている料理です。
ただし、このダンプリングは団子は団子でも肉団子では無く小麦粉団子ですので、パズーの”肉団子のスープ”とは少し違いますね。
もちろん、ウェールズはあくまでロケーションのモデルと言われているだけであり、必ずしも物語の舞台というわけではありませんので、作中でイギリス料理が出てくる必然性はありません。でも、イギリスの伝統料理であるダンプリングと肉団子、同じ”団子”同士、少しニュアンスを含めているのかな、なんて考えてみるのも楽しいものです。
そうなってくると、別段実際にある料理にこだわる必要はありませんので、作中の描写から推測して自由にパズーの肉団子のスープを作っていきたいと思います。
“肉団子のスープ”の具材を考えます。
まず、わかりやすいところから始めましょう。
パズーのポットに注がれたスープはオレンジ~明るい茶色あたりの色で描かれています。
ぱっと見るとよく煮込まれたビーフシチューのようにも思います。イギリスといえばビーフシチューも定番ですし…。ただ、ビーフシチューであれば、わざわざ追加で頼んでいる肉団子が霞んでしまうように思いますし、牛肉に肉団子に、となるとだいぶ豪勢な夜食にも思えてしまいます。
それに、後ほど登場するシータのシチューとも料理が被ってしまいますし、トマトベースのスープというあたりが、ちょうど良いあたりなのかな、と感じます。
他にも海外の煮込み料理に使われる赤い食材としてはレッドキャベツやビーツなども挙げられますし、特にビーツはイギリスでもよく使われる印象がありますが、どちらももっとビビットな赤に仕上がるように思いますので、やはりトマトベースのスープというのが妥当ではないでしょうか。
続いて具材ですが、”肉団子”はもちろんとして、他の具材を推測する唯一の手掛かりは、おたまに掬われているいくつかの茶色い大きな塊です。色味からするとお肉のようにも見えますが、上記の通りビーフシチューではないと思われますので、よくよく煮込まれたじゃがいもあたりでしょうか。
この鉱山の街はあまり裕福ではありませんし、パズーが小銭3枚で購入していること、加えてに鉱山の男であるパズーが夜食用に購入していることから、具材は比較的安価なものであり、かつ肉体労働に必要なエネルギーとなる炭水化物が多く入っていることが考えられます。
では、じゃがいもがゴロゴロ入った肉団子のスープであるとして、『天空の城ラピュタ』のパズーの”肉団子のスープ”を作ってみましょう。
肉団子ふたつ。パズーの夜食”肉団子のスープ”を作る
まず、この料理のメインでもある肉団子から作ります。
今回は少しふんわりとした食感が欲しかったので、つなぎとしてパンを水に浸したものを使用しました。ただし、入れすぎると肉感が損なわれてしまうので、あくまで主はひき肉となるように分量を調整します。
肉団子の作り方はいろいろですが、我が家では
- 合い挽き肉
- 炒め玉ねぎ
- パン
- ナツメグ
- タイム
- ブラックペッパー
- 塩
を基本に合わせています。まずはひき肉に塩ひとつまみを加えて、粘り気が出るまでしっかりと揉み込んでから、玉ねぎやパンなどつなぎを加えて丸く整形します。

少し多めの油で、表面を揚げるようにして焼きます。表面に焼き色がついたら、油をスプーンで掬って肉団子にかけながら火を入れていきます。
仕上げの際にスープに入れて軽く煮るので、完全に火を入れなくても大丈夫です。

肉団子は一度、お皿に取り出して、スープを作っていきましょう。
スープにはしっかりと出汁を効かせるために、脂乗りの良い厚めのベーコンを使用します。
鍋に油を薄く敷いて、ベーコンをしっかりと脂が出るまで炒めます。

野菜は玉ねぎ、セロリ、ニンニクをみじん切りにして使います。リーキ(ポロネギ)は輪切りにしました。野菜の甘味が出るまでじっくりと炒めたのち、白ワインを加えます。

アルコールを飛ばしたのち水をヒタヒタまで加え、ローリエ、タイムを入れて野菜が柔らかくなるまでしっかりと煮込みます。

十分に煮込めたところで、トマトピューレを加えてさらにぐつぐつと煮込んでいきます。

具材として形を残したいじゃがいもや小玉ねぎ(今回は入れませんでした)は最後に入れて、それらが好みの火の通りになれば仕上がりとします。
じゃがいもがしっかりと煮込まれ、表面が少し煮崩れをする程度になったら、肉団子を加えて、塩胡椒で味を調整すれば出来上がりです。

パズーが持っていたスープの容れ物もなかなか憧れる形状なのですが、あの容れ物のようなスープ容器は現実にはなかなか見つかりません。なので、下手な類似品を探すよりも、普通のお皿に盛り付けてしまうことにします。
肉団子をふたつ入れて…

『天空の城ラピュタ』よりパズーが夜食用に購入した”肉団子のスープ”の完成です。
しっかり濃厚なスープに仕上がりました。
“肉団子のスープ”再現レシピ

炭鉱街の肉団子のスープ
Ingredients
Method
- 玉ねぎはみじん切りにして、甘みが出るまでじっくりと炒める。その後、火からおろして粗熱を取っておく。
- ボウルに合い挽き肉と塩ひとつまみを入れて粘り気が出るまで手早くしっかりと揉み込む。さらにタイム、ナツメグ、胡椒を入れて満遍なく混ざるように揉み込む。
- パンを水につけてふやかした後、絞って水気を切り細かくちぎる。ちぎったパンと冷ました玉ねぎを肉に加えてしっかりと揉み合わせる。
- 肉タネを一口大分手に取る。両手でキャッチボールするように交互に手のひらに叩きつけて空気を抜き丸める。
- フライパンに多めの油を注ぎ、火にかけて170度前後に温めておく。丸めた肉タネを小麦粉にくぐらせてから一つずつ油の中に置いていく。箸で転がしながら調理していき、全面に焼き色がついたら取り出して油を切っておく。
- 玉葱、ニンニク、セロリはみじん切りにする。
- ポロネギは輪切りにする。
- 塩漬け豚肉はみじん切りにする。
- 具材のじゃがいも、玉葱は皮を剥いて大きめに切る。
- 鍋にミートボールを揚げた油を敷き、みじん切りにした玉葱、ニンニク、セロリと輪切りにしたポロネギを入れる。塩ひとつまみを加えて野菜が透き通るまでさっと炒めたら、塩漬け豚肉のみじん切りを加えてさらに炒める。
- 白ワインを加えてアルコールを飛ばしたら、水をひたひたになるまで注ぐ。そこにタイム、ローリエを入れて野菜が柔らかくなるまで(最低30分ほど)煮込む。
- しっかりと煮込めたらトマトピューレと水煮トマトを加え、さらに20~30分ほど煮ていく。
- トマトが馴染めば、具材として切ったじゃがいもと玉葱を加えて、火が通るまでコトコトと煮込む。
- 最後に肉団子を入れて、温まれば出来上がり。
- お皿に盛り付け、好みでパセリなどを散らす。
